ほんの少し Crimson rose
その雌鳥は悩んでいた
いつまでも孵化しない卵をじっと耐えて温めていた
何か予感めいたものも感じていた
きっとこの子は私の子じゃない
一緒に産まれた卵達はとっくに産まれて巣立っていった
親としての最低限の責務を果たそうと雌鳥は
その時が来るのをただじっと耐えていた
そしてついに産まれるときがきた
だが正確には何も起きなかった
その卵の中身は空だった
今までの苦労は無駄だったのか
しかしその雌鳥は幸せだった
今までの温もりその時間その存在
全てが愛おしく思えたのだ
どこかで命が燃え上がる瞬間
また命が宿る瞬間
またどこかで出会えるのだろうか
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